第六回鏡るびい

魔物チルドレンとしてライヴに足を運んでいたことで知られるメンバー、鏡るびい。今ではすっかりバンドの一員となっている彼女だが、他メンバーからも「るびいはいまだに謎」という声が出ているように、そのパーソナリティはあまり知られていない。初の単独インタビューで、生い立ちから現在の心境までを存分に語ってもらった。

取材・文:岡本貴之

―るびいちゃんは小さい頃どんな子どもだったんでしょうか。

るびい:幼稚園の頃は、毎日おままごとをしていました。あ、それと着替えるのが1人だけ遅かったです。それは今も変わらないんですけど。「はっ!」って気がつくとみんな用意が終わっている感じで(笑)。でも、「今日は早く着替えよう」と思って一番早く衣装に着替えると、そういうときに限って楽屋からいったん外に出なきゃいけなくて、みんなは着替えてなかったりするんですよ。それでまた私服に着替えるという。

―そのルーツが幼稚園にあるんですね。

るびい:そうかもしれないです(笑)。小学生の頃はあんまりみんなと馴染めなくて。休み時間も花壇にあるお花とかモンシロチョウの観察のために育てていたキャベツにいるイモムシとかを見に行ってました。それかウサギとかニワトリを飼育小屋の外からず~っと見てました。

―所謂「いきものがかり」になっていたわけじゃなくて?

るびい:飼育委員になると小屋の中に入れるんですけど、飼育委員は人気だったので、クラスで権力のある女の子に取られてしまって。それから中学に上がって、軽音楽部に入ったんですよ。それでベースをちょっとやっていたんです。

―ベースやってたんですか?どんなきっかけで始めたんでしょうか。

るびい:軽音部に入ったらギターを弾く人がいっぱいいたからです。なんか、反骨心があって「ベースの方がカッコイイじゃん」と思って。

―ベース・プレイヤーとしてはその後どうなったんでしょうか。

るびい:しおりちゃんって友達がいたんですけど、その子も私と同じタイミングでベースを始めて、あれよあれよという間に私よりベースが上手くなってしまったんです。「同じタイミングで一緒に始めたのに」って、すごく劣等感に苛まれて。それまでも、あんまり自信が無くて、劣等感に押しつぶされそうになりながら生きていたんですけど、その時“自分よりも上手にできる人がいる”って何か明確にわかったというか…。でも今考えればそのモヤモヤした気持ちがなかったら、「自分には何もないけど何かしたい」っていう気持ちにならなかったと思います。ロックとかも好きになってなかったかも。

―10代の頃は家でどんな音楽を聴いていたんですか。

るびい:小さい頃から小学校卒業くらいまでバレエをやっていたので、ずっとクラシックを聴いてたんですよ。中学に上がったくらいから、嫌なことがあったら音楽に逃げてたというか、好きな音楽を聴いて日々頑張るみたいな感じでした。でも、そのときに思った「音楽が好き」って気持ちと、今思っている「ロックが好き」っていう気持ちはちょっとベクトルが違った感じというか、全然違う種類のものなんですよね。

―今に繋がる「ロックが好き」という心が芽生えたのは?

るびい:YouTubeで神聖かまってちゃんの曲を見つけて「なんだこれは!?」みたいになって、CDを買ってずっと聴いてたんです。その頃くらいからですかね。私が好きなのはこういう音楽だって気づいたのが。フェスの「夏の魔物」を知ったのもかまってちゃんがきっかけです。「夏の魔物」に1人で新幹線に乗って新青森でレンタカーを借りて観に行ったんですけど、そのときに初めて、魔物のライヴを観ました。

―ライヴを観て気になってはいたわけですか。

るびい:はい、キラキラしてて青春みたいな感じで、すごく眩しかったというか…。KING BROTHERSさんやザ50回転ズさんの突き抜けたロックとか、ベッド・インさんみたいなマニアックだけどロックな感じや、神聖かまってちゃんのダークな感じとかが私は好きだったので、キラキラした感じにあんまり馴染みがなかったんですよね。でも曲を聴いてたら、日々の鬱憤とかモヤモヤとか「何かしてやるぞ」みたいな気持ちが入っているけどキラキラしていて、それがすごいなって思ったんです。

―その後、オーディションを経て加入することになるわけですが、自分に自信がなかった人が自分が観ていたステージの側に立つのって相当勇気がいることなんじゃないかなと。

るびい:自分に自信もないし、自分には何にもないってずっと思っていたんですけど「どうしても受けたい」って思ったんですよね。それで書類を送って。合格したときには思わず「なんで私なんですか…?」って聞いちゃいました。

―その時はどういった話をしたんですか?

るびい:「るびいちゃんを観てお客さんがフリの真似をしたくなるようなパフォーマンスをしてほしい」って言われました。THE 夏の魔物を結成してからは、ダンスだけではなく歌も歌わせてもらっているので、もっと自分の気持ちを表現できるようにボイストレーニングもしています。

―THE夏の魔物1stシングル「僕と君のロックンロール」はこれまでになくシンプルなロックですが、ロックが好きなるびいちゃんからするとすごく好きなタイプな曲なんじゃないですか。

るびい:デモを聴いたときに「こ、これは!」みたいな、自分が昔衝撃を受けたときの“ビリビリ”っていうのを感じました。

―MVも公開されましたけど、最後に出てくる題字を書いているそうですね。

るびい:そうなんです!あれは、せのしすたぁさんとのACBホールでの2マンライブの日に書きました。ACBホールはちょうど1年前に魔物のライヴをファンとして観た会場で、使ったロッカーまで覚えていて。いろんな感情全部がごちゃまぜになって自分の中でブチ切れて大爆発できたライヴだったんですよ。そのライヴが終わって帰るくらいのときにMVの題字を書いたんです。だから、あの題字は名阪ワンマン・ツアーから東京の2マンを生バンドでかましたエナジーが全部詰まった“ロックな字”になっていると思います。



―アントンさんが作詞した「over the hill」はどう感じていますか。

るびい:私が一番好きなのは「荒れ果てた公園 捨てられた自転車 まだ僕の心は君のものかもしれない」っていう歌詞なんです。中学のとき部活に行って「しおりちゃんよりベース上手く弾けないし帰ろう」って1人でほてほてと歩きながら帰ったときとかに見た夕日とか…暗くなってきた放課後に、みんなが頑張ってボールを追いかけたりしているのを見ながら「私は何をしているんだろう」とか思った帰り道とか…そういう気持ちのときに見た景色を思い出しました。

―各メンバーのことについても教えてください。まず成田さんから。

るびい:成田さんに関しては、これはみなさんおっしゃってると思うんですけど、ステージの上と楽屋で目つきが全然違うんですよ。ステージ上では獲物を見るような目つきになるというか。成田さんはあまり言葉では言わないですけど、やりたいことの筋がめちゃくちゃ通っていると思うんです。私はやりたいことがあってもうまく表現できずに、くすぶっていたりするんですけど、成田さんはとにかく行動力がすごいから、尊敬しています。「この人について行くぞ」って思っています。

―大内さんは?

るびい:大内さんは、ダンスを教えてくれた優しい人でした。今は、「面白い人」です(笑)。大内さんは、何があっても怒らないんですよ。でも、自分の友だちや仲間が何かされるとめっちゃ怒るんです。それを聞いて「本物のライダーなんだ」って思いました。ただ特撮が好きなだけじゃなくて、じつは大内さんは、魔物のライヴのとき以外は、別の時間軸とか日本じゃないところでもしかしたら本物の仮面ライダーなんじゃないかって思っているんですよ。

―アントンさんに関してはいかがですか?

るびい:アントンさんは、お父さんみたいなんですよ。みんなを優しく包み込んでくれるような。アントンさんが言う「るびいちゃん、大丈夫だよ」っていう言葉って、すごく安心するんですよね。本番前とかにテンパリまくっていたりすると「大丈夫、大丈夫」って言ってくれるんです。そうすると安心して頑張れます。アントンさんが発する言葉1つ1つには魂が込められている気がします。ライヴ中のアントンさんはロックの塊みたいな感じでめっちゃカッコイイです。

―麻宮みずほちゃんが加入したことはどう感じていますか。

るびい:みずほちゃんはすごいスピードでダンスを覚えるし、上手いんですよ。パフォーマンスにもものすごく惹きつけられるものがあって、とにかく尊敬しています。でも普段は面白い、不思議な子ですね。あんまり不思議な子って見かけないじゃないですか?

―いま目の前にいますけど(笑)。これまで話を訊いたメンバーからは、るびいちゃんは相当不思議な子だって聞いてます。

るびい:えっ嘘…(笑)。でも、私はどこにでもいる、そこらへんに生えてる草みたいな感じですよ。排気ガスの下にいるただの草みたいな感じです。あ、でも言っておきますが私はクールキャラです、本当は(キッパリ)。

―同い年の泉茉里ちゃんはいかがでしょうか。

るびい:チャンさんのダンスって、仮想現実みたいなんです。コンピューターグラフィックみたいにキレキレなんですよ。同じ次元に生きている人間じゃないくらいに感じています。「僕君」のMVで振り返るシーン1つとっても、すごく素敵なんですよね。それと、チャンさんの歌声にも、初めてバンドを観たときと同じような衝撃を受けるときがありますね。

―そういえば茉里ちゃんが、るびいちゃんは醤油を集めるのが好きですごい数を持ってるって言ってましたけど、醤油を集めるのが趣味なんですか?

るびい:私、醤油に関しては「解体真書」1つできるくらい長く語れます(笑)。チャンさんはLINEで醤油が並んでる写真を送ってくれるんです。愛情を感じます。料理に使うのも好きだし、お刺身が好きなので、お刺身に合うお醤油を探して買ったりしていて、どんどん増えて行きました。特別な風味がついたものとか、特別な原料を使ったものとか。あと甘い醤油が大好きなんです。他にものりの風味がついた醤油とか燻製の風味が付いたお醤油とかあるんですよ。本当にめちゃくちゃ好きなんです。うちに今、50種類くらいあるんですよ、醤油。旅行に行くとみんな、お土産コーナーでおせんべいとかクッキーを見るじゃないですか?でも「調味料・タレ」というものに焦点を合わせてみたら、全国各地ものすごく面白いんですよ!いま、塩とドレッシングも気になりつつあるんですけど、そこまで広げるともう手に負えなくなるので、醤油とタレに絞ってます。



―衝撃を受けたものにハマってしまうところがあるんですね。

るびい:衝撃を受けたらすぐハマってしまいます。アントンさんのインタビューで、私がロケ弁のちくわを美味しいってずっと言ってたって話してたじゃないですか?あのとき本当にめっちゃ美味しかったんですよ、ちくわ。みんなとご飯食べてても、1人だけテンションが違うんですよ。だからこの前みんなとご飯食べたときは「みんなうるさいって思ってるんだろうなあ~」って思いながら気を付けて静かに食べました。

マネージャー:いや、一口ごとに「美味しい~美味しい~」って言ってたよ(笑)。

るびい:(笑)。だって美味しかったんですもん。パっと見たら、みんなのお皿におひたしが乗ってたんですけど、私が頼んだものにはおひたしが無かったんですよ。でも後で食べたらめちゃくちゃ美味しくて。「みんなこんな美味しいおひたし黙って食べてたのかよ!?」って。

―(笑)。

るびい:最近は静かにご飯を食べることと、滑舌を良くすることが目標です。

―では3月17日に卒業する塚本舞ちゃんに向けて。ファン時代から憧れてきたるびいちゃんからすると色んな想いがあるのではないでしょうか。

るびい:卒業しちゃうのはもちろん寂しいんですけど、まいぷにさんがライヴを観に来てくれたり、私たちの活動を見てくれたときに「私がいないとやっぱりダメだったな」って思われないように「るびいはちゃんと頑張ってるな」って思ってもらえるように、安心してもらえるように、まいぷにさんの魔物魂はちゃんと私が受け継いでやって行こうと思っています。もちろん私だけじゃなくて、みんなまいぷにさんの魂を心に宿してやって行くと思います。

―舞ちゃんの卒業公演の翌日3月18日に早速6人になった新しいTHE 夏の魔物のライヴがあります。今まで「自分に自信がなかった」るびいちゃんはこの先どうやって進んで行きますか。

るびい:チャンさんとみずほちゃんって一緒にやっていても、すごいなって思うんです。そんな人たちと一緒にやれることってすごく怖いというか…「私に二人くらいできるのかな?」って不安になるんです。それでも私は本当にTHE 夏の魔物が大好きなんですよ。今までの人生みたいに、やる前に諦めたくないんです。大好きな曲たちを大好きなメンバーとバンドのみなさんに生演奏してもらってライヴができるのも最高だと思っていますし、応援してくれる魔物チルドレンのみなさんがいるし、私にしかできないパフォーマンスをやって、私の色を探していきたいです。3月18日は新しい自分を見せられるよう仕上げていくので、ツアーファイナル、何が何でも絶対見にきてください!

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